群青の月
柚葉の体をそっと抱き上げ、そのまま大通りに路駐している車に向かった。


その間、俺の腕の中にいる彼女は、微動だにしなかった。


ただ従順になってくれただけなら、どれくらい嬉しかっただろう…。


だけど…


今は言葉を発する事すら無い柚葉に、胸の奥が酷く軋んだ。


その虚(ウツ)ろな瞳には、まるで何も映していないようにも見える。


こんな顔をする柚葉を見るくらいなら、悪態をつく彼女の方がずっと良かった。


助手席に乗せても動こうともしない柚葉は、もう生きていないんじゃないかとすら思えた。


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