群青の月
あの日――。


あたしは、無我夢中で家を飛び出した。


逃げ出す事だけで精一杯だったから、自分が裸足だって事も気付かないままとにかく必死に走って、隠れるように路地裏に入った。


だけど…


人目に付かない薄暗い場所は、悪戯に不安を煽る。


恐怖心に囚(トラ)われていた事もあって、どこにいても母親やあの男達に見付かるんじゃないかと怯え、捕まってしまう事を酷く恐れていた。


そんな時に耳に届いたのは、携帯の着信音。


冷静さを失っていたあたしがその事に気付いた直後、それは途切れてしまった。


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