群青の月
震える手でバッグの中を漁って、やっとの事で携帯を見付け出した。


だけど…


着信履歴に表示されたバイト先の派遣会社の名前を見て、闇の中に突き落とされたように酷く落胆した。


冷静になれないまま頭の中を駆け巡るのは、あの人達に見付かってしまうんじゃないかと言う恐怖…。


道行く人達の足音に怯え、携帯を握り締めたまま震える事しか出来なかった。


何が原因なのかもわからない物音に、何度も体を強張らせる。


しばらくしてふと顔を上げた時に視界に入って来たのは、淀んだ夜空に浮かぶ月だった。


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