群青の月
「どこがよ?」


「……何か、全体的に?」


眉を寄せたあたしに、男は疑問形で返して来た。


自分で言ったくせに疑問形でしか答えない彼に、何だか急に苛立ちが募り始めて…


あたしは、また大きなため息を漏らした。


「てか、『人に名前を訊く時は自分から名乗れ』って、習わなかった?」


「誰に?」


「誰って……。そんなの知らないけど、幼稚園とかで」


「俺、幼稚園じゃなくて、保育園に通ってたんだよ」


男はさっきまでの笑顔を消して、至って真面目な表情で答えた。


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