群青の月
震える右手で、携帯をキュッと握る。


だけど…


せっかく少しだけ冷静になれたのに、自分が今どこにいるのかはわからなかった。


「わ……かんない……」


やっと発した答えでは、居場所を知らせる事は出来なかった。


「じゃあ、何でもいい。周りにある物を言ってくれ」


話しながら冬夜が慌ただしく動いている気配がして、それを感じながら恐る恐る顔を上げた。


「目の前の看板に、牡丹(ボタン)って……。後、月が……」


「他には?」


あたしは恐怖心を抱いたまま、目にした物を口にしていった。


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