群青の月
その後、自分がどんな説明をしたのかはよく覚えていない。


電話越しに聞こえる冬夜の声に、ほんの少しだけ安心出来る気がして…


何度も『大丈夫だから』って言ってくれる彼の言葉に、ただ縋り付くように頷いていた。


「柚葉、他に何か見えないか?今、駅のすぐ近くにいるんだけど」


「ビル……」


「ビル?」


「うん、赤の……」


目の前のビルを見て言ったあたしに、冬夜が返した時…


「赤いビルだな?わか……」


耳元でプツッと音が鳴って、彼の声がそこで途切れてしまった。


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