群青の月
いや、問題はそこじゃないし……


そう切り返そうと口を開き掛けた時、すっかり男のペースになっている事に気付く。


自分自身に呆れながら、ビールと一緒にその言葉を飲み込んだ。


「俺、冬夜」


「別に訊いてないから」


“冬夜”と名乗った男に、大きなため息を返す。


「で、お前の名前は?」


「言わないし」


「教えろよ」


「嫌。てか、しつこい……」


冬夜は鬱陶(ウットウ)しいくらい何度も訊いて来たけど、あたしは負けじとひたすら拒み続けた。


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