群青の月
言葉を失くして戸惑うあたしに、冬夜は特に何かを気にする様子も無く笑って、靴箱から黒いクロックスを出した。


「これなら、お前でも履けるだろ」


「何かダサイ……」


「文句言うな。男の一人暮らしなのに履く物があるだけでも、有り難いと思えよ」


眉を寄せた冬夜を無視して、仕方なくクロックスに足を入れる。


「似合ってるじゃん」


からかうように笑った冬夜を一瞥し、彼に続いて外に出ようとした。


その瞬間…


「……っ!」


心臓がドクンと大きく鳴った気がして、その場から動けなくなってしまった。


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