群青の月
「柚葉……」


タバコを一口吸った後、煙と一緒に自分の名前を吐き捨てるように呟いた。


「へぇ、いい名前じゃん」


瞳を緩めて穏やかに笑った冬夜の言葉は、きっと本心だったんだと思う。


だけど…


あたしは嬉しさを感じる事も無いまま、夜空を仰いだ。


「仕事は?何してんの?」


続けて投げ掛けられた質問に、忘れ掛けていた苛立ちが蘇る。


ちょっと名前を教えただけでさっきよりも馴れ馴れしく接して来るなんて、本当にバカみたい。


これだから、人間は嫌いなんだ…。


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