群青の月
耳に届いた着信音が、すぐに冬夜の携帯のものだとわかったのは、何度か聞いた事があったから。


それに…


あたしは、あの日からずっと携帯をバッグに入れたままで、充電すらしていないそれが鳴る事は無い。


「……出ないの?」


しばらく黙って画面を見つめていた冬夜に訊くと、彼は眉を寄せて微笑みながらため息をついた。


「……もしもし?」


電話に出た冬夜の声がどこか複雑そうに聞こえたのは、どうしてなんだろう…。


彼は電話を片手に、空いた方の手でタバコを箱から取り出した後、性急に火を点けた。


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