群青の月
「悔しかった……」


噛み殺すように吐かれたその言葉は、冬夜の内(ナカ)にある感情の全てだったのかもしれない。


ただその気持ちだけを抱いて一人であの屋上に行った彼の姿が、ふと頭の中に浮かんだ。


「信じてたのに俺を裏切った同僚にも、自分の言う事を信じてくれない上司にも、金が全ての会社にも幻滅して……。何よりも悔しくて悔しくて、何もかもがどうでも良くなったよ……」


淀んだ空、汚れた街…。


そして、それらに埋もれてしまっている人々…。


出会ったあの日、あたしと冬夜はきっと同じものに幻滅していたんだ…。


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