群青の月
「会社の奴かと思って咄嗟に睨んだけど、お前は動じる事も止める気もなくてさ……。何だか急にバカらしくなって、思い止(トド)まる事が出来たんだ」


あの時…


あたしは、冬夜を止める気なんて微塵も無かった。


人間そのものに幻滅していたあたしは、他人はもちろん、自分自身すらもどうでもいいと思っていたから…。


「吹っ切れた……って訳じゃなかったけど、柚葉の態度に笑いが込み上げて来たお陰で、心が落ち着いて少しだけラクになったんだ」


冬夜の表情からはさっきまでの悔しそうな感じは消えていて、心無しか口調も柔らかくなっていた。


< 487 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop