群青の月
「もう、寝ようか……」


その言葉だけしか零す事が出来なくて、その後すぐに手を伸ばしてヘッドライトを消した。


その手でまた柚葉の体を抱き締めようと思うのに、何だか触れてはいけない気がする。


行き場を失くした手はほんの少しの間だけ宙を彷徨(サマヨ)い、戸惑いを抱いたまま彼女の背中にそっと落ちた。


しばらくしても抵抗しない柚葉に、やっとの事で心が落ち着きを取り戻す。


彼女が眠っているのかどうかはわからなかったけど、聞こえて来る小さな息遣いに少しだけ安堵して、一人じゃないんだって思えた。


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