群青の月
前屈みになった俺は、頭を抱えるようにしていた柚葉の両手をそっと掴んだ。


様子を窺いながら、ゆっくりと彼女を立ち上がらせる。


沈黙の中で柚葉が顔を上げた瞬間、俺の目に飛び込んで来たのは彼女の涙だった。


心臓が飛び出したんじゃないかと思う程、ドクリと大きく動いたのがわかって…


驚きのあまり言葉を失くし、ただ目を見開いて柚葉を凝視してしまう。


彼女は何か言いたそうにしながらも、唇を噛み締めて顔を背けた。


エントランスの蛍光灯がやけに眩しくて、柚葉の横顔を伝う涙がキラキラと光っていた。


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