群青の月
近付いて来た冬夜の顔が、あたしの耳元で止まる。


一瞬の沈黙の後、彼の吐息が耳に触れた。


「好き、なんだ……」


囁かれた言葉の意味を理解出来なくて、視界が滲んだままキョトンとしてしまった。


そんなあたしから少しだけ離れた冬夜が、穏やかな笑みを浮かべた。


「柚葉の事が好きで……。いや、たぶん“愛してる”って表現の方が正しいかな……」


彼の表情に、もう迷いは無かった。


強く真っ直ぐな瞳で見つめられたあたしは、言葉を失ってしまう。


だけど…


いつの間にか、涙は止まっていた。


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