群青の月
スーツを着たサラリーマン風の男が、革靴の音を響かせながらあたし達の横を歩いて行く。
グチャグチャの顔を見られたくなくて、慌てて顔を背けたけど…
床を見つめながら、男の訝(イブカ)しげな視線が刺さるのを感じた。
「……とりあえず戻るか」
男が自動ドアを抜けて足音が遠くなった頃、冬夜が小さく切り出した。
エントランスに降りて来た時には白(シラ)み始めていた空が、今はもうすっかり明るくなっている。
きっと、もうすぐ他の住人も降りて来る。
まだボーッとしながらそう考えたあたしは、泣き声を隠す為に無言で頷いた――…。
グチャグチャの顔を見られたくなくて、慌てて顔を背けたけど…
床を見つめながら、男の訝(イブカ)しげな視線が刺さるのを感じた。
「……とりあえず戻るか」
男が自動ドアを抜けて足音が遠くなった頃、冬夜が小さく切り出した。
エントランスに降りて来た時には白(シラ)み始めていた空が、今はもうすっかり明るくなっている。
きっと、もうすぐ他の住人も降りて来る。
まだボーッとしながらそう考えたあたしは、泣き声を隠す為に無言で頷いた――…。