群青の月
冬夜はまるで、あたしの心の中を見透かすように腕の力を抜いた。


今ならきっと、背中に回された腕を振り解く事が出来る。


簡単じゃん……


冬夜の体を、力いっぱい押し退ければいいだけなんだから…。


それから、いつもの口調で別れを告げてさっさと立ち去ればいい…。


本気で出て行こうとすれば、今度はエントランスで蹲る事も無いと思うから…。


「ほら、今なら逃げられるぞ?でも柚葉が抵抗しないなら、俺からは絶対に離さない」


まるで揺れるあたしの心を繋ぎ止めるように、冬夜がまた腕に力を込めた。


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