群青の月
心臓がドキリと大きく跳ね上がったのは、柚葉に名前を呼ばれたのが初めての事だったから…。


俺の記憶が正しければ、今まで彼女が俺の名前を呼んだ事は一度も無かった。


だから…


突然の出来事にあまりにも驚き過ぎて、柚葉に背中を向けたまま動けなくなってしまった。


「ねぇ……」


程なくしてもう一度呼び掛けられた事で、さすがにこの状態でいる事を許されなくなる。


「……どうした?」


完璧に平静を装う事は出来なかったけど、出来るだけいつも通りの笑顔を繕った後、ゆっくりと振り返った。


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