群青の月
◇Side‥柚葉
【Side‥柚葉】
静かな部屋に小さく響くのは、クーラーの機械音と時間を刻む秒針の音。
あたしはベランダのガラス戸の前に立って、月も星も見えない夏の夜空をぼんやりと仰いでいた。
「月、見えるか?」
シャワーを済ませてリビングに戻って来た冬夜が、開口一番そう訊いた。
ガラスに映る彼に、首を横に振って応える。
「まぁ明日は天気悪いみたいだし、仕方ないよ」
ため息混じりに笑いながら歩み寄って来た冬夜が、慰めるようにあたしの頭を撫でた。
その手の温もりを感じながら、あたしは意を決して口を開いた。