群青の月
ドクンドクンと脈打つ心臓の音は、まるで警告音みたいだ。


早鐘(ハヤガネ)を打つ心臓は、これが現実である事を思い知らせる為に動いているんじゃないかとも思う。


誰かに殺意が芽生えたのは、初めての事だった。


そんな俺の気持ちを察したのか、柚葉が俺を見つめた。


彼女は不安そうにしながらも、真っ直ぐな瞳を向けている。


その表情に胸の痛みが増して、泣き出してしまいそうになった。


「あたしは、母親に売られたの……」


どこか落ち着いた声でそう告げた柚葉は、俺を見つめたまま唇を噛み締めた。


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