群青の月
何も言えなかった。


掛ける言葉なんて、一つも無かった。


今にも泣き出してしまいそうなのは、抱いた覚悟が本当は薄っぺらいものだったからなのか、とすら思う。


柚葉に対する想いは、ちっとも変わらない。


それなのに…


殺意が芽生える程の怒りを抑える術がわからなくて、柚葉を真っ直ぐ見つめ返す事が出来ない。


彼女を守りたいと思った時、もう不安なんて無かった。


だけど…


柚葉の心の傷を癒す事は俺なんかには到底出来ない気がして、今になってまた不安を感じてしまっていたんだ――…。


< 568 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop