群青の月
「良かったわね、アンタみたいなのでも買ってくれる人がいて」


「な……っ、に……言っ……て……」


恐怖心に包まれながら小さく返すと、真っ赤な口紅を塗った母の唇がゆっくりと弧を描いた。


「……十万円分、しっかり奉仕しなさいよ」


嘘……


見開いた目に溜まっていた涙は、あまりにも驚き過ぎて引っ込んでいた。


「じゃあ、後は好きにしてね」


満面の笑みで言った母に、あたしの上にいる男達が下品な笑みを返した。


そして…


母はあたしを一度も見る事も無く、部屋から出て行ってしまった。


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