群青の月
あたしが心を無にする事を覚えたのは、たぶんこの時だった。


ぼんやりとする意識の中、虚ろな瞳で視線の先に転がっていたビールの空き缶を見つめていた。


それなのに…


蝉達の鳴き声も、窓からあたしを刺すように照り付ける太陽の熱も、やけにリアルに感じていた。


これが、初めての行為だった。


だけど…


痛みがあったのかどうかもわからない。


気が付くと男達はいなくなっていて、部屋の中には眩しいくらいの夕陽が射し込んでいた。


そして、あたしの視界に入っている空き缶が滲んでいた――…。


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