群青の月
「あたしにまだ『体を売れ』って言う母親と、酷い口論になって……。喧嘩の途中で母親を迎えに来た二人の男に、あの人は……」


思い出すだけで恐怖心が蘇って、目の奥が熱くなる。


「あたしの事を……『好きにしていいよ』って言ったの……」


その熱を抑えるように目を閉じたまま、ゆっくりと俯いた。


「恐くなって、手当たり次第に物を投げて……。その後、無我夢中で家を飛び出した……」


必死で走って逃げたあたしは、気が付くと自分が今どこにいるのかすらわからなくて…


心は不安に煽られ、全身が恐怖に包まれていた。


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