群青の月

◆Side‥冬夜


【Side‥冬夜】



柚葉を想うと切なくて堪らなくなって、気が付くと衝動的に彼女を抱き締めていた。


気丈に振る舞いながら自分の過去を話してくれた彼女の心には、きっと大きくて深い傷が刻まれてしまっている。


それを癒す術はやっぱりまだわからないし、もしかしたらもう一生消える事は無いのかもしれない。


だけど…


『そんな時、冬夜の顔が浮かんだ……』


そう言ってくれた柚葉のこの言葉だけで、俺にはもう充分だって思えた。


そして…


俺は生まれて初めて、本気で自分よりも大切だと思える存在を見付けたんだ。


< 614 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop