群青の月
◇Side‥柚葉
【Side‥柚葉】
茹だるような暑さを忘れ掛けた9月上旬、いつの間にか蝉の鳴き声を耳にしなくなっていた。
あんなにも嫌悪していた、蝉の鳴き声。
それが気にならなくなったのは、一体いつからなんだろう。
そんな事を考えるようになった頃には、真夏日の暑さにも体調を崩さなくなっていて…
昼間には酷く不機嫌になっていたのが嘘みたいに気持ちも落ち着いて、あたしの中の夏への嫌悪感が薄らいでいた。
情けない事に、未だに一人で外出をする勇気は出ないけど…
冬夜と一緒なら、とりあえずはそれも出来るようになった。