群青の月
◆Side‥冬夜
【Side‥冬夜】
「おやすみ」
「うん、おやすみ……」
照明を落とした暗い部屋の中で囁けば、ほんの少しだけぎこちなさを含んだ返事が零される。
こんな事に笑みが溢れるのは、もう何度目の事だろう。
『ただいま』と言えば、当たり前のように返って来る『おかえり』。
二人分の『おやすみ』で1日を終えて、同じだけの『おはよう』で朝を迎える。
それは、子供の頃に友達と遣っていた秘密の合言葉を口にした時のように、くすぐったい嬉しさを感じる事の出来る風景。
そんな些細な事に、俺は本当に幸せを感じていたんだ――…。