群青の月
何とか情欲に打ち勝つ事が出来た俺は、息をゆっくりと吐く。


鼻先をくすぐる柚葉の髪から漂うシャンプーの香りが、俺をまた誘惑しようとする。


同じ物を使っているのに、彼女から香るとやけに愛おしさが込み上げて来る事が不思議だった。


だけど…


今はその甘い誘惑に負けてしまわないように、再度息を吐いた。


もうこれ以上は余計な事を考えなくても済むように、一刻も早く眠れるように努める。


俺は、間抜けな自分と悲しい男の性(サガ)に苦笑した後、呆れ混じりのため息を落としてから瞼を閉じた――…。


< 648 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop