群青の月
「痛っ……!」


包丁も火も扱い慣れていないから、ここ数日で両手は傷だらけになっていた。


冬夜は、古い傷が治る暇も無くそれが増え続けるあたしの手を見て、いつも心配そうにしている。


だけど、こんな軽い火傷や小さな切り傷は、今までの人生に比べたら“傷”なんて呼ぶ程のものじゃない。


だから、ほんの少しでも冬夜の為になる事が出来るなら、こんな傷の痛みくらい安易に耐えられた。


あたしはまた増えた傷に呆れてため息を漏らした後、冬夜が買って来てくれた絆創膏を指に貼りながら不器用な自分自身に苦笑した――…。


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