群青の月
◆Side‥冬夜
【Side‥冬夜】
「今日さ、一人で外に出たよ」
柚葉からそんな報告をされたのは、金木犀(キンモクセイ)が蕾を付け始めた9月下旬の事だった。
「え?」
ネクタイを外しながら驚く俺に、彼女が何食わぬ顔で続ける。
「まぁタバコが切れたから、すぐそこのコンビニに買いに行っただけなんだけどね」
「いつ?」
「昼過ぎくらい」
「……大丈夫だったのか?」
不安を抱く俺に反して、柚葉が小さな笑みを浮かべて頷いた。
俺は微笑みを返して、何も言わずにただ彼女の頭を優しく撫でた。