群青の月
「……もしかして、こういうキスには慣れてなかったりする?」


ほとんど無意識に尋ねてしまった後で、すぐにハッとして口を噤んだ。


こんな質問に答えさせると言う事は、柚葉に過去を思い出させてしまうと言う事…。


浅はかな言動で彼女を傷付けてしまったんじゃないかと、心の中に大きな不安が過ぎった。


だけど…


「あ、あんまり……」


柚葉が耳まで真っ赤にしながら震える声で紡いだのは、そんな短い言葉。


ムードもデリカシーも無い問いに素直に答えた彼女の事が、俺はやっぱり愛おしくて堪らなかった。


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