群青の月
目的地で車を降りた俺達は、ひんやりとした風に吹かれながら前と同じ場所まで歩いた。


だけど…


「見えないね、月……」


辺りを見渡した柚葉が、ため息混じりに呟いた。


彼女の言葉通り、凜と澄んだ青空にはただ太陽と雲が在(ア)るだけで、月の姿はどこにも無かった。


「だから言っただろ、『たまにしか見れない』って……」


諭すように言いながらも、肩を落とす柚葉を見て少しだけ切なくなる。


「また来ればいいだろ。その時にはきっと見れるよ」


残念そうに空を仰ぎ続ける彼女に、俺は小さく笑ってそう言う事しか出来なかった――…。


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