群青の月
俺が会社を辞める原因になったあの企画を盗んだのは、今目の前にいる畑野。


その張本人を前にした俺の全身を、憎しみが詰まった黒い感情が渦巻く。


「冬夜」


そんな俺の異変に気付いたのか、不意に柚葉が俺の腕を軽く引っ張った。


あまりの怒りに自我を失っていた俺は、どこか不安げな彼女の表情にハッとした。


「早く帰ろ?あたし、この後バイトだって言ったじゃん」


それはきっと、柚葉が思い付いた精一杯の口実だろう。


少しだけ視線を泳がせた彼女を見て、全身を取り巻く憎しみを強引に追い払った。


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