群青の月
「こんばんは、柚葉ちゃん」


「なっ……!」


どうしてここにいるのかと尋ねようとした声は、何かを企むように浮かべられた相手の笑顔に怯むように飲み込んでしまった。


「俺の事、ちゃんと覚えてる?」


目の前にいるのは、レンタルショップで会ったあの男…。


名前を呼ぶ事すら嫌で、質問には答えずに視線を逸らした。


「何だ……」


すると、男はため息混じりに呟いてから続けた。


「その様子じゃ、全然覚えてないみたいだね。まぁ正式には、“まだ思い出せてない”って言った方が正しいかな」


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