群青の月
「……大通りの近くの路地裏」


意味深な笑顔で吐かれたその言葉に、全身がビクリと強張る。


「春頃だったかな、君と俺が出会ったのは……。確かゴールデンウィーク間近で忙しくて、ストレスが溜まってたんだよね」


続けて独り言のように落とされた言葉の端々には、反吐が出そうな程の厭らしい笑みが含まれていた。


目の前がグラグラと揺れ始め、息苦しさを感じる。


パニックになりながらも思い出したのは、最初に冬夜の元を去った頃の事…。


そして…


冬夜と出会ってからたった一度だけ体を売った、“あの夜”の事だった――…。


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