群青の月
◆Side‥冬夜
【Side‥冬夜】
冬が間近に迫った冷たい空気に包まれた、閑静な夜の住宅街。
その一角にそびえ立つマンションの手前まで来た時、少し先に見える二つの人影に気付いて足を止めた。
「あ、アンタ……あの日のっ……!」
「そうだよ」
聞き覚えのある二人の声が、耳を撫でるようにしながら通り抜ける。
その一つは酷く震えていて、何か良くない話だって事は明白だった。
頭の中で、警鐘(ケイショウ)が鳴り響く。
それがここから立ち去るように促しているのはわかっているのに、俺は何故かその場から動けなくなっていた。