群青の月
「……ふっ、ざけんなっ!!」


閑静な夜の住宅街に突如響いたのは、柚葉の怒鳴り声。


奥歯を噛み締めて立ち尽くしていた俺は、今までに一度も聞いた事が無いような彼女の怒声に驚いて、思わず顔を上げてしまっていた。


「そんなっ……そんなつまらない理由で……っ!」


柚葉が何かを堪えるように、声を詰まらせる。


「……そんな理由だけで、冬夜が必死に努力して手に入れようとしたものを奪ったのっ!?」


一呼吸置いてから畑野に投げ掛けられた言葉には、もしかしたら彼女の怒りの全てが込められていたのかもしれない。


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