群青の月
「アンタみたいな奴にっ……!アンタのせいで、冬夜はっ……!」


肩を震わせながら声を振り絞る柚葉の背中が、酷く痛々しい。


そんな彼女を見て、俺はハッとした。


努力して積み上げて来た、僅かなキャリア。


寝る間も惜しんで考えた、会社に捧げる企画。


そして…


もしかしたら俺に与えられるはずだったのかもしれない、上り詰める過程の肩書き。


畑野の奪われたものはたくさんあって、それらが戻って来る事はもう無い。


だけど…


そんな自分(オレ)にも、まだ残っているものがあるから…。


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