群青の月
「やめっ……!」


「その子は俺に体を売ったんだぞ!」


慌てて止めようとした柚葉の声を遮り、畑野は一息に言い切った。


どこか焦りを見せる彼が、いっそ哀(アワ)れだとすら思えて来る。


仕方なく振り向くと、畑野が口元を緩めてニヤリと笑った。


だけど…


「それがどうした?」


俺はその勝ち誇った笑みを打ち消すように、ゆっくりと静かに言い放った。


そして…


「……もう二度と俺達に近付くな」


心底悔しげに眉を寄せた畑野に再び背中を向け、今度こそ柚葉を連れてエントランスに入った――…。


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