群青の月
適温で張られていたお湯が、体温を失い掛けていたあたしの体をゆっくりと温めていく。


程なくして、冬夜があたしの体を後ろからそっと抱き締めた。


その瞬間にビクリと強張った体を安心させるように、彼がうなじに顔を埋めて来る。


あたしの全てを愛おしむように優しく這う唇が、少しずつ首筋に移動していく。


いつもなら、体を重ねるような甘い雰囲気。


だけど…


今は胸の奥が切なく締め付けられるだけで、その雰囲気に酔いしれる事なんて出来ない。


伏せた瞳に涙が溢れ出して、それが湯舟にポタリと落ちた。


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