群青の月
「……はい、三万」


さっきまでバカみたいに息を荒くしていた男は、ぶっきらぼうに言いながらベッドの隅にお金を置いた。


「こんな事してないで、ちゃんと仕事したら?君のご両親も、心配するんじゃない?」


男は嫌味なくらい高級そうなスーツを羽織りながら、そんな尤(モット)もらしい言葉を口にした。


……バカじゃないの?


あたしを買った滑稽(コッケイ)な男に、説教染(ジ)みた台詞を吐かれたくない。


「……じゃあ、行くから」


男は黙ったままのあたしに呟くように言い残した後、逃げるように部屋から出て行った。


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