群青の月
冬夜がハンドルを片手にラジオを入れると、スピーカーからはクラシックが流れた。


「……これ、嫌。眠くなる」


「ん?別に寝ててもいいよ」


冬夜は、視線を前に遣ったまま笑顔を見せた。


「そういう問題じゃないから」


眉をしかめてため息をついても、彼は何も答えようとしない。


不服に思いながらもう一度ため息を漏らして、目の前に置いてある冬夜のタバコに手を伸ばした。


そして、当たり前のように箱から抜き取ったタバコを咥え、傍に置いてあった彼のジッポで手早く火を点けた。


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