群青の月
クローゼット、チェスト、靴箱、洗面台…。


いつも柚葉の物が置いてあったそれらの場所に、彼女の物は何一つ無かった。


洗面台の下に置いてあるゴミ箱には、柚葉が使っていた水色の歯ブラシが捨ててあって…


その光景を見た瞬間、それまであんなにも焦っていたのが嘘のように、頭の中が冷静になっていくのがわかった。


「そう、か……」


柚葉は、出て行ったんだ……


冷静さを取り戻した頭がその事を理解するのに、大して時間は掛からなかった。


そして…


その後は、そこから一歩も動く事が出来なかった。


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