群青の月
いつも使っているバッグを肩に掛け、ボストンバッグを反対側の手で持つ。


大して重くないはずのそれらが、何だかすごく重く感じてしまった。


グリルと見渡したリビングには、あたしの物はもう何一つ残ってはいなくて…


初めてここに来た時と、よく似た景色に戻っている。


言葉に出来ない程の寂しさを感じるのは、ずっと住んでいたあのアパートよりも、ここにいた時間の方が遥かに濃かったからなのかもしれない。


見納めになるんだと思うと、中々踏ん切りが付かなくて…


しばらくの間、その場から動く事が出来なかった――…。


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