群青の月
「もう、行かなきゃ……」


動けずにいる自分を促して足を踏み出したのは、身支度を整えてから1時間以上が経った後の事だった。


自分の物は何も残さない、って決めた。


だけど…


用意していた茶封筒だけは、テーブルの上に置いて行く。


中に入っているのは、十数枚の一万円札。


冬夜と出会ってから貰い続けた金額には程遠いけど、せめてほんの少しだけでも返したくて…


母親にも内緒で貯めていた少額と最近の給料を、出来るだけ入れておいた。


あたしには、もうこんな事くらいしか出来ないから…。


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