群青の月
バタリと閉まったドアの鍵を性急に掛けた後、その勢いで合鍵をポストに入れた。


カランッと軽快に鳴った金属音に、胸の奥が強く締め付けられる。


だけど…


唇をギュッと噛み締めて歩き出し、何度も何度も振り返りそうになりながらもエレベーターに乗り込んだ。


一階まであたしを運ぶ箱の中で、ツンと痛む鼻の奥。


目頭の熱を堪えながらエントラスを抜けた後は、とにかく全力で走った。


頬に感じる冷たさは、きっと冬の風だけのせいじゃないけど…


あたしは立ち止まる事も無く、ただそれに気付かない振りをする事しか出来なかった――…。


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