群青の月
「あの、滝沢柚葉さんですか?」


「そうですけど」


柔らかい物越しで話す女の人の声に、眉を寄せて小首を傾げる。


すると、電話口でため息が落とされた。


「良かった、やっと繋がったわ……」


相手のその言葉で、何度かこの番号から電話が掛かって来ていた事をハッと思い出した。


だけど…


睡眠時間以外は昼夜問わずバイトをしていたから、電話が掛かって来た時にはいつも出る事が出来なかった。


そして、全く知らない番号だからという理由で、あたしから電話を掛け直す事も一度も無かった。


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