群青の月
ゆっくりと足を踏み出すと、看護師も前を向いて歩き出した。


病室の前に着いた時には、看護師がドアを開けるのを緊張しながら見ていた。


不安も戸惑いも、決して押し込める事は出来ない。


だけど…


あたしはもう、何もかも諦めていた昔の自分(アタシ)じゃない。


冬夜のお陰で、ほんの少しくらいは変われたと思うから…。


「滝沢さん、娘さんが来てくれましたよ」


看護師の言葉で顔を上げて、その後に続いて病室内に足を踏み入れた。


その瞬間、驚き過ぎて目を大きく見開いてしまった。


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