群青の月
「柚葉……?」


弱々しく、だけどしっかりとあたしの名前を呼んだのは、痩せ細った姿の母親。


それを目の当たりにしたあたしは、無言のまま驚く事しか出来ない。


そんなあたしよりも、母の方がずっと驚いたみたい。


母は見た事も無い程の戸惑いの色を顔に浮かべ、目を大きく見開いていた。


看護師に優しく背中を押されて、ベッド脇まで足を進める。


あたしも母も言葉を交わさず、ただ顔を見つめ合っているだけだったけど…


「何かあったら、お声を掛けて下さいね」


看護師は何かを感じ取ったのか、静かに病室から出て行ってしまった。


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