群青の月
兄貴の言葉で記憶の糸を手繰り寄せ、数年前の事を思い出す――。


あれは確か俺がまだ大学生で、会社も軌道に乗っていなかった頃の事だ。


俺は、兄貴に強引に仕事を手伝わされていた。


給料なんて小遣い程度だったし、普通にバイトをしている方がよっぽど稼げた。


だけど…


いつも背中を追い掛けていた兄貴に頼られている事が嬉しくて、仕事を教わる事が楽しくて仕方なかった。


その時、兄貴の友人達に乗せられて作ったのがこの企画…。


だけど…


兄貴は企画書に軽く目を通しただけで、冷たく突っ撥(パ)ねた。


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